ファラデーの伝- その後の研究・光と電磁気との関係 -

十五、その後の研究

 次には、電気力並びに磁気力の関係(発表は一八三八年六月、「電気の実験研究」第十四篇)。その次は電気鰻の研究で、他の電気と同様に磁気作用もあり、火花も出すし、化学作用もあるということを発表した。それは同年十二月である。(同第十五篇)

 かように、研究を出してはおったものの、身体が段々と衰弱して来たので翌一八三九年には、秋まで研究を止めて休養し、その後に電池の起電力の研究にかかった。これが「電気の実験研究」の第十六および十七篇になっているもので、前者は一八四〇年二月、後者は同三月に発表した。

 元来、電池の起電力について、相異なれる二つの金属の接触によりて起るという説と、金属と液体との化学作用によりて起るという説とあった。ファラデーは電気作用と化学作用とは両々相伴うもので、かつ比例することを示した。化学作用がなければ電気作用は起らず、されど相異なれる金属を接触させなくとも、電池を作り得るという例までも示した。

 一八四〇年の九月十四日よりは実験を止めて、約二個年ばかり休養した。その後ちょっと水蒸気が他の物と摩擦するために電気の起ることを研究したが、(一八四三年一月に発表、「電気の実験研究」の第十八篇)、これを以てファラデーの研究の第二期を終るのである。この次の研究は一八四五年の半(なか)ば過ぎからで、第三期として述べる。

「電気の実験研究」の第一巻には、上の第十三篇までがおさめてあって、一八三九年に出版した。全体で、五百七十四頁(ページ)ほどある。

 第十四篇から十八篇までと、これにずっと以前に発表した電磁気廻転の論文や、電磁感応の発表のときに、イタリア人のノビリおよびアンチノリが出した論文をファラデーが訳し、それに自身の反論を附したものや、またこのときゲー・ルーサックに送った長い手紙や、その他の雑篇を集めて第二巻とした。三百二頁あって、出版は一八四四年である。それゆえ、おもなものは第一巻に集っていることになる。

第三期の研究

十六、光と電磁気との関係

 この前、十年間の研究に際して、ファラデーの心を絶えず指導して来たのは、自然界の種々の力は互に関係ありということであった。その一つとして電磁気と光との間に何にか関係があるという予想は、ファラデーが五年間休養している間に、段々と円熟して来た。

 ファラデーは健康が回復すると、一八四五年には再び研究にかかり、八月三十日から電磁気と光との関係につきての実験をやり始めた。

 まず電気分解をなしつつある液体の内に偏光を通して見たのであるが、この際、いかなる作用が起るかを予期しておったかは明かでない。ただ手帳には、

「長さ二十四インチ、幅一インチ、深さ一インチ半のガラス函を取り、この内に電解質の液体を入れ、電気分解をなしつつある間に、種々の条件の下に偏光を通じて試験をした。」

と書いてあるのみである。

 電極には白金を使い、液体には硫酸ソーダを用いたが、結果は出て来なかった。そこで、液体をいろいろと変えて、十日間実験をつづけた。その間に使ったのは蒸溜水、砂糖の溶液、稀硫酸、硫酸銅等であった。それに電流も、偏光の進む方向に通したり、これに直角に通したり、なおこの電流も、直流を用いたり、交流を用いたりしたが、それにも関わらず、少しも結果が出なかった。

 そこで実験の方法を変えて、固体の絶縁物をとり、静電気の作用の下に置いて、この内を通る光に何にか変化が起るかと調べ出した。

 最初にやったのは、四角なガラスの向い合った両面に金属の薄片を貼りつけ、発電機の電極につなぐと、ガラスの内部を通る偏光に、何にか変化が起るかと調べたのであるが、やはり変化は見えなかった。

 それからガラスの代りに、水晶、氷洲石(アイスランド・スパー)、重ガラスを用い、またタルペンチン、空気等も用いて見、なお偏光も電気力の方向に送ったり、これに直角に送ったりした。さらに静電気のみならず、電流にして速い交流も使っても見た。しかし、いずれの場合にも作用は少しも無かった。

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入力:松本吉彦、松本庄八 校正:小林繁雄

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